分岐に引き返すと秩父御嵩山の登山口となっている。この道を行ったら、登山することになってしまうのではないかと、少し引き返して車で集配をしているおじさんに道のことを訊いてみた。山に沿った細い道が続いているが、それが巡礼道かどうかはわからないという。ともかく行ってみることにした。
本当にこの道でいいのか心配しながら歩いて行ったが、小さな赤い鳥居のあるところに巡礼道の指導標があった。この道でよかったのだ。そこからは本当に山道で、小さな沢を渡って小学校の横に出る。ここで車道に出たが、緩やかに上って小さな峠を越える。峠には標石があった。
下って行くと県道に出てしまって、あとは車道歩きかと思ったら、思わぬところに巡礼道の指導標がたっていた。県道を右に横切るようにと書いてある。金網の柵があるのだが、よく見たら通れる隙間がある。踏み跡がしっかりしない草茫々の道で、本当にこれでいいのかと疑ってしまう。
枯れ草が覆い被さる荒れた道だが、ちゃんと巡礼道の札が下がっていた。
檜の植林の中を行き、これを抜けると冬枯れの雑木林になった。道はジグザグに沢に向かって下って行く。そういえばこの道の入口に「増水時は迂回すること」と書いてあったので沢を徒渉するのかもしれない。予想通りであった。沢が合流するところで徒渉する。幸い小さな流れだったので、簡単に渡ることができた。でも、そこから指導標がなくなってしまった。踏み跡は続いているので、これをたどって再び徒渉した。
益々心配になった頃、行く手に観音菩薩と書かれた赤い幟が見えた。これは札所によく見る幟なので、道は間違ってないようである。沢に沿って踏み跡を行くと、巡礼道の札が下がっていた。よかった、道は間違っていなかった。
沢を右に徒渉して、それから急な坂を登る。登り切ったところには小さな御堂があった。でも、名前は書いていない。この御堂の前には31番・大指と書いた黄色いプラスチックのパネルがあった。この矢印に従って歩いて行く。民家の庭先ではないかというような所を通って、集落の中の細い道を行く。時々巡礼道の指導標もたっている。暗い檜林を抜けて、緩やかに上ると県道に出た。そこには大指のバス停があった。県道との合流点に巡礼道の指導標はなかった。もしかしたら分岐を見逃したのかもしれない。こうなったら県道を行くしかない。
県道を10分ほど歩くと、道の駅まで2.5kmの道路標識があった。さらに15分ほど行くと自然遊歩道のイラストマップが立っていて、それによると自然歩道の「小森コース」を行くと、県道を歩かなくてもいいようである。県道を歩くのはいやなのでこのコースを行くことにした。
小森橋を渡ると自然湯歩道の指導標がたっていて、これに従って左の急な道を登って行く。平坦になって集落に入ると、石の鳥居が見えてきた。指導標に書かれていた諏訪神社である。ごく普通の神社に見えるのだがこの神社の歴史は古くて、寛平5年(893)に信州の下諏訪より遷宮したものなのだ。
神社の前を右折して田んぼの中をのんびり歩いて行く。お寺の門のような観光園の入口を左に見て少し行くと「あずま山ハイキング道桜本コース」という標識があった。
このすぐ先には新しい御堂がたっていて、その前には「秩父多葉粉(たばこ)生産の地」という説明板がああった。この宝泉寺付近で採れるタバコは良質で、当時、薩摩の国府・相模の秦野と並び称される名産品だったらしい。でも、御堂の説明はなかった。
ここから少し歩いたら、もう「道の駅薬師の湯」であった。11時8分になっていた。
少し休憩した。
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