熊野古道に戻って歩いて行くと、右に五輪塔の標識があった。寄ってみようと思ってこの道に入ったが、200mほど行っても塔はなくて、道も下りになってしまったのであきらめることにした。
竹林や鬱蒼とした照葉樹の林を抜けて行くと、すぐ下にはJR線路と海が見えた。私はこの先で砂浜を歩くつもりでいるのだ。けっこう楽しみである。
樹林から抜け出して、右が崖になったところに出ると、そこには地蔵尊と石碑がたっていた。地蔵は「孫八地蔵」で、石碑は「御手洗板碑」である。
ここから樹林の中に入って沢筋に下り、最後に丸太を組んだ階段を降りると、新しいトイレがたつ広場に降り立った。スタンプのポストや熊野古道説明板もたっている。
ここから引き返すようにした先に木組みの階段があって、海に流れ込む流れの横を下ると砂浜に降り立つ。これが王子ヶ浜である。
熊野灘がパノラマのように広がっている。なにかしら爽快な気分になってしまう。
砂浜と期待したが、砂利のような小さな丸石の浜であった。
しばらくは堤防の下に続くコンクリート道を歩いて行ったが、これが流れでとぎれたとこで、波打ち際に向かった。砂利道のようで歩きにくいのだが、打ち寄せる波を眺めながら歩いて行くのはすごく気持ちいい。白いレースのような海岸線が遠くまで続いている。寄せては返す波。この砂浜をのんびり歩いて行くと、時々列車が走って行くのが見える。なにかしら、熊野古道を歩いているというような、すごい旅情を感じてしまうのだ。
浜を30分ほど歩くと、プラットホームのようなものが見えたので、このコンクリートのスロープを上ったら、この先は堤防の内側に道が続いていた。コンクリート壁にはちゃんと熊野古道の標識があった。
堤防の道を歩いて行くと、大きなザックを背負った若者がやってきた。彼はこれから熊野古道を歩くのだそうで、今日新宮から歩き始めたところだという。新宮の街の中の古道の指導標のことを訊いたら、路面に標識のパネルが埋め込まれているので、これを目印にしたらいいと教えてくれた。よかった。街の中で迷う心配がなくなった。
堤防を500mほど歩くと指導標があって、ここから左に堤防を下るのだ。
松林の中を抜けて車道に出る。どっちへ行くんだと思ったら電柱に浜王子跡の標識があった。その矢印に従って、住宅街を歩いて行くとすぐに道の角に杜(もり)があって、いつもの青い説明板がたっていた。ここが浜王子である。
ここにはちゃんとした神社があって、長屋門をくぐった先にはちゃんとした社が祀られていた。
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