自然歩道に戻って、田んぼの中の道を行く。いかにも奈良の郊外といった風景で、その上歴史も感じさせる。
途中「鹿野苑」というところがあるので、どんなところかと楽しみに歩いて行った。でもかなり歩いたと思うところで白山比盗_社に着いた。これで、通り過ぎてしまったことがわかった。
国道を横切ったり、田ぼの中に入ったりして歩いて行くと、崇道天皇の御陵の前に出た。
ここから山側に向かってしばらく行くと、両側に黒の柱が立つ門に着く。この先が圓照寺である。
このお寺にはけっこう思い入れがある。
私が30年前、大阪に来たばっかりで、さかんにお寺巡りをしていたときに、三島由紀夫が「豊穣の海」という3部作の小説を発表した。その第1作は「春の雪」というのだが、そのなかにこの円照寺が登場するのだ。
私が初めてこの寺を訪れたのは春真っ盛りの頃で、帯解から円照寺に向かって歩いて行くと、田んぼにはレンゲの花がいっぱい咲いていた。
今、こうして歩いていると、その頃の雰囲気とはまったく違ってしまったような気がするのだが、それでもなぜかひどく懐かしい。
円照寺は拝観を受け付けていない。門の前まで行くだけである。寺に近づくと、杉木立の中の道になって、しんとした「気」が満ちてくる。
門をくぐると、お寺の玄関までは小石が敷き詰めてあって、それはきれいに掃き清められている。その敷き詰められた小石の中を、真っ直ぐに飛び石が続いている。玄関もけっこう趣があるのだ。
中に入れないのは残念なのだが、この雰囲気を楽しんだだけで、来たかいはある。
さて、寺の門を出てすぐに、左の丘に向かって上がって行く細い道がある。自然歩道は国道まで戻らなければいけないのだが、ショートカットすることにした。
登って行くと大師堂があった。
ここから下ると田んぼの道に出て、すぐに自然歩道と合流する。
広い車道をしばらく行くと分岐があって、ここが柳茶屋。
弘仁寺をめざす。
車道を離れて、山に向かって登って行くと、石段があった。これを登りきったところが弘仁寺であった。
ここで休憩。
特に拝観するというものもなくて、境内をうろうろしただけである。
|