金蔵寺からは一気に大原野に下る。道はすぐに舗装道路に合流するが、この車道は大きなカーブの連続になっている。自然歩道はそれを縫うようにショートカットして続いている。
この道はかなり急であった。
突然、視界が開けて、集落に出る。そこはもう京都洛西、大原野であった。
ここであっさりと道を間違えてしまった。
指導標の案内が極めてわかりにくかったのだ。20分ほど迷って再び最初の指導標のところに戻ってきた。
指導標というのは、柱があって、そこに進行方向の方角に案内板が突き出されいるのが普通なのだが、案内板は右方向に突き出されているのに、よく見ると、案内板に矢印が書かれていてそれは左を指しているのだ。
こんなのインチキだと叫びたくなった。
まず大原野神社に向かう。大きな石の鳥居をくぐって長い参道を行く。
本殿はこじんまりしているが、桧皮葺の屋根がひどくすっきりしていて、美しさを感じる。
ここから花の寺を目指す。大原野神社からほんの少し行くと大きな門があって、これが花の寺の山門なのだ。
長い石段を登って行く。500mほどある。
花の寺の入り口の門はさっきの門に比べると、ひどく小さい。門を潜って拝観をお願いした。
花の寺は正式には「勝持寺」といって、天台宗の寺である。
本堂に上がると、右に宝物館がある。
正直に言ってしまうが、私が関西最初のウォーキングでこのコースを選んだのは、ここにある如意輪観音像を見たかったからなのだ。
ところが…、それはなかった。
宝物館にはたくさんの仏像が安置されていて、両端には大きな仁王像、その内側には十二神将が並んでいる。
真ん中に座す本尊は薬師如来である。脇侍として日光月光の菩薩像が立っている。
期待の如意輪観音がないのでがっかりしてしまった。
あの観音像は花の寺にあったのではなかったのか、自分の勘違いか…と思ってしまった。
ただ、ここの薬師如来はすてきだった。鎌倉時代のものなのだが、金箔が剥落して黒く光っている。
印の結び方が変わっている。普通、薬師如来は施無畏、与願の印で、左手の与願印の上に薬壷を持つ。
ところがここの薬師の右手は、薬壷から薬をつまみ出しているかっこうなのだ。
この薬師如来にはけっこう惹かれてしまう。
期待の如意輪観音には会えなかったけど、満足。
ここ、花の寺の庭は桜の花が美しいことで有名で、満開のころに来たらすばらしいんだろうと思う。境内には「西行桜」という桜の木もある。
花の寺を出ると案内があって、願徳寺はこちらと書かれ、そこに国宝如意輪観音とある。もしかしたら、私の会いたかった観音像はこれではないかと思って、このお寺も拝観することにした。
願徳寺は花の寺のすぐ隣にある寺院で、拝観を乞うと本堂の前で待って欲しいという。本堂の閉ざされた扉の前に行くと、住職が出てきて扉を開けた。
中に入って正座して正面を見ると、そこには私が求めていた観音像が安置されていた。
住職本人が説明をしてくれた。この観音の説明に入ると、中の照明が消されて、この観音だけがライトアップされた。闇に浮かぶ観音像はすばらしく美しかった。
お礼を言って外へ出るときに、「昔は花の寺にあったと思うが…」と訊いてみると、6年前まで花の寺に預けてあったのだが、返してもらったのだそうだ。
納得した。
花の寺からは竹薮の道を下って行く。住宅の中の道に出て、筍の直販店を見ながら行くと、国道に出る。
ここが今日の終点、沓掛である。
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