展望台から急な道を下ると車道に出る。小さな川の畔に自然歩道の案内板があった。ここからは車道歩きで、長良川に向かってひたすら歩くのだ。
ぼうっ歩いていたので指導標を見逃してしまった。本当は途中から左に入って、集落の中を抜けて長良川の畔りに出るのである。私は広い車道を歩いてしまったため、長良川にぶつかったその先は、車の往来の激しい県道を行かなければいけなかった。車通行が多いのに歩道部分がついてなくて、歩いていて気が気ではない。
古津のバス停を過ぎると行く手には千鳥橋が見えてくる。その手前に天皇陛下鵜飼観覧の記念碑が立っていた。ここには誰の歌なのかわからないのだが歌碑があった。
日の本の はじまりてより ためしなき
みかどの鵜飼 たのしげにこそ
長良川といったら鵜飼なのだが、この鵜飼の歴史は驚くほど古くて、日本書紀や万葉の頃に始まっているのだ。鵜船は6艘で構成されていて、1艘に鵜匠と中鵜匠、船夫が2人乗る。私は残念ながら実際にこの鵜飼を見たことはない。
でも、鵜がなにかしらかわいそうな気がしてならないのだ。せっかく鮎を飲み込んだ鵜の首をしめて、その鮎を吐き出させるのだから。芭蕉の句
面白うて やがて悲しき 鵜船かな
にはうんと納得してしまうのだ。
私が今歩いている県道は、ループで一段高い千鳥橋に登って行くのだ。でも、歩行者用の階段があったので、これを登って橋の上に出た。
橋には歩道がついていて、その途中に展望するスペースも設けられていた。長良川は大きな川だと思う。そしてすぐ向こうに聳える金華山の眺めがすばらしい。
橋を渡りきったところで右折して川に下り、歩いてきた千鳥橋の下をくぐって、長良川沿いに歩いてゆくのだ。
左に長良川の悠々とした流れを眺めながら歩いて行くと、険しい岩の崖の下を通り土手の上に出る。そこにはきれいな公園が作られていた。
この公園を抜けると、自然歩道は「長良川リバーサイドウェイ」という有料道路に沿って作られたサイクリングロードを行く。
有料道路には途中トンネルが2つあって、一つ目はトンネルの中を歩いた。2つめは山越えをしようとしたのだが、道は有料道路の反対側に出るだけのものだったので、引き返してトンネルを抜けた。ところがこれは間違いであった。地図で確認すると山越えで有料道路の反対側に渡るのが正しいのだ。
山を越えて下るとそこに神社があって、地図の通りなのだが指導標がない。もしかしたらルートが変更になったのかもしれない。でも、下芥見の町から山あいの道に入って老洞峠を越えるというのはわかるので、ここからは指導標をあてにせずに、地図を見ながら歩くことにした。
民家の中、細い道を歩いてゆく。磁石で方向を確認しながら細かな曲がりを繰り返していったら、どんぴしゃり、下芥見の駅の横の踏み切りに出た。
でも、この名鉄美濃町線は廃線になっていた。
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