道は小津川に沿って大きく蛇行して続いている。車道に雪はないのだが、山の斜面にはたくさんの雪が残っていた。
小津の集落に入ると、すぐに右折して小津川を渡る。ここからは下辻谷を東南に向かうのだ。雨はシトシトと降り続いていて、どこかにテントを張って今日はのんびりしてしまいたくなる。
大きくカーブして、かなり急な勾配の道を行くと、道は完全に雪に覆われてしまった。また雪道だ、昨日の鍋倉山で雪道にはうんざりしている。イヤな予感である。
雪の道を歩いて行くと、左に東屋があった。もうここにテントを張ってしまおうかと思ったが、この東屋は完全に雪に囲まれていて、とてもテントを張れる状態ではなかった。
ここを過ぎるとすぐに大きな砂防ダムがあった。
自然歩道はこのダムに向かって登って、それから左折して北東に向かう。
樹林の中に入ると、下には小さなダム湖が見えた。いよいよ下辻越えの道に入ったのである。
小さな谷に沿って道は続く。雪の上に足跡が続いている。たぶん二人だと思うが、まだ新しい足跡である。人が通った道だと思うと、なにかしら心強い。
樹林の中なので展望はきかない。道はジグザグを繰りかえして峠に向かって登ってゆくのだ。
この雪道は一歩ごとに足がとられて歩きにくい。つけられた足跡も、時々大きく潜ったりしている。時間がどんどん過ぎてゆく。
沢が二つに分かれるところに出ると、ここで道がわからなくなった。右か左か。ザックを分岐において偵察をしたがどうにもわからない。途方にくれてしまう。足跡もあちこちについていて、完全に迷ったみたいである。
気持ちを落ち着けるために休憩することにした。津汲のお店で買ったパンをかじって、コーヒーをつくって飲んだ。おなかに何か入ると、不思議と気分は落ち着いてくる。
さて気を取り直して、もう一度、二万五千分ノ一の地図を検討すると、道は二つの沢の間の尾根についていることがわかった。沢沿いの道だろうと思い込んでいたので間違えたのだ。
この尾根の道をジググザに登ってゆく。雪で隠されているものの、道の感じはよくわかるのだ。
この登りはきつくて、かなり長く感じた。
ようやく「辻峠」に着く。そこには十字路になっていて、稜線に沿った林道を横切るのだが、その下り口にはひっそりと石仏がたっていた。
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